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清らかな青だった
「海が荒れておる、水竜様がお怒りになられておるのじゃ……」
長老の目の前に広がる海は、まるで水竜が暴れているかのように激しい波だ。
ここはちょっとした崖の上にある、海に近い村アプレイン。
今日は新しい水の巫女の結婚の儀を行う日である。水の巫女シルフィアは、村一番の金持ちアベルと結婚することになっていた。
「はぁ……」
村中が結婚の儀の準備で慌ただしくしている中、控室のテントで巫女衣装に着替えされられたシルフィアは大きなため息をついている。
「お姉ちゃん、ため息ついてると幸せが逃げるよー」
「もう、幸せなんて逃げていってるわ」
巫女のテントで身の回りの手伝いをしている妹のサラが、せっせと仕事をしながら話しかけてきた。
「そんなこと言わないでよ。巫女様は短命なんだから、結婚できる年齢になったら結婚してご世継ぎを作ってもらわないと困るらしいよ」
「巫女の力は貴女も持っているでしょう、サラ」
「しょうがないね。お姉ちゃんの方が早く生まれたんだから、お姉さんが巫女様にならなきゃいけないしきたりだし」
「そんな古臭いしきたり、早く無くならないかしら……」
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