笑わない女の子と笑いすぎる男の子の、笑顔にまつわる物語

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笑わない女の子と笑いすぎる男の子の、笑顔にまつわる物語

 とても有名な話だが、桑折一笑さんは笑わない。そりゃあもう、くすりとも笑わない。微笑みすら都市伝説だ。だけど、マジメでとてもいい人だ。頼み事をすれば断ることなくやってくれる。気が利くし、勉強も出来るし、文句の付け所がなかった。高い身長に長い髪。少し色白な肌をしていて、男女ともに人気が高かった。  これもとても有名な話だが、天道昇太君は良く笑う。そりゃあもう、大声上げて。笑わない日を見ない程だ。そして、とてもいい人だ。頼み事をする前に、笑いながら近づいてきてやってくれる。勉強はちょっと苦手だが、いつだってクラスを盛り上げてくれる。低い身長に短い髪。少し焦げた肌色をしていて、男女ともに人気が高かった。  そんな対照的な二人は中学校の隣の席同士。席替えで決まっちゃったからしょうがない。一年間、席替えはないので、一年間、この不思議な光景は続く事になる。 「桑折さーん、ちょっとお願いしてもいい?」 「桑折さん、ここ教えて~?」  クラスメイト達は、何かと桑折さんを頼る。桑折さんはマジメなので、なるべく応えようとする。 「いいよ。何?」     
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