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「そんな感じだよ! あっはっは! あ、勿論これは僕の哲学だから、聞き流しちゃって~!」
廊下に響き渡る、バカでかい笑い声。天道君は、自分の辛い生い立ちを話したばかりだというのに、その前までと何も変わらない態度だ。
天道君は、すごい人だ。桑折さんはこの人を見くびっていた事を恥じた。この人にいい加減な事をしてはいけない。そう強く思った。
「ごめんなさい」
「ん? 気にしなくて良いよ~」
「いえ、違うの。私、ちゃんと私の話を全部してない」
「?」
「本当は私、上手に笑えないだけなの」
誰にも言った事のない自分の心の奥底を、訥々と話し始める桑折さん。
「子どもの頃から両親にずっと愛想良くしろ、笑っていなさいって言われてきたけど、心の底から笑えなくて、上手に出来なくて。その度叱られて。
……私、どうしたらいいか分からなくて、せめて怒られないようにと思って、一生懸命何でもマジメに頑張ってきたの。勉強も、習い事も、生活習慣も。
文句はすぐに言われなくなったわ。けど、時々両親の寂しそうな顔を見る度、ちゃんと笑わなきゃって思うんだけど、どうしたらいいのか分からないの。
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