笑わない女の子と笑いすぎる男の子の、笑顔にまつわる物語

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 笑いかければ笑い返してくれる。そんな当たり前の事を、桑折さんは今、とても楽しみ、喜んでいる。笑いかけられれば、心が温まって、自然と笑いが出る。時折ぎこちないけど、それも段々馴染んでいくだろう。 『特別になる日』が無くなって、桑折さんは『普通の女の子』になったのだ。  とても有名な話だが、桑折一笑さんは静かな笑い方をする、マジメでいい人だ。高い身長に長い髪。少し色白な肌をしていて、男女ともに人気が高い、普通の女の子だ。  そしてこれは誰も知らない事だが、桑折一笑さんは、授業中にふと隣の席の天道君と目が合うと、誰にも見せない、とても穏やかな笑顔を天道君に送るのだ。  とても有名な話だが、天道昇太君は良く笑う。そりゃあもう、大声上げて。笑わない日を見ない程だ。そして、とてもいい人だ。  そしてこれは誰も知らない事だが、天道昇太君は、授業中にこっそりと向けられる桑折一笑さんの笑顔に心が温められ、そして桑折さん以外の誰にも見せない優しい笑顔で微笑み返すのだ。
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