笑わない女の子と笑いすぎる男の子の、笑顔にまつわる物語

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 ふぁさり、と目にかかる程伸びた前髪を掻き上げながら優雅に人混みから現れた男の子。彼は……! 「君たちでは埒があかない。大体、女の子を笑わせようと言うのに、低俗なギャグばかりやっているのが信じられないよ」 「お、お前は女ったらしの御手洗!」  キャー!と黄色い声援が上がる。それを背に受けて、御手洗君はフッとキザに笑う。イケメンとして知られる彼は、多くの女生徒のファンを抱える学年のアイドル的存在であった。その彼の指示で女の子達は鹿田君を押さえ込んでいたのだ。 「女の子の扱いというものを教えてあげよう!」  ゆっくりと桑折さんに近づく。果たして……?  桑折さんはと言えば、きょとんとした顔で、彼を見ている。 「桑折さん……いや、一笑さん! 君はどうしてそんなに美しいんだ……」  跪きながらのキザな台詞。黄色い声援と、男連中からのブーイングが教室に鳴り響く。 「『一笑千金』という言葉を知っているだろうか? ただの一笑みが千金の価値があるほどの美人という意味さ。まさに君にふさわしい言葉だ。  誰にも見せない君の笑顔、その価値は万金、いいやそれ以上! 君が思っているよりも、君の笑顔はとても価値がある、尊いものなんだよ。  どうかその素敵な笑顔を、僕に見せてはもらえないだろうか?」     
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