笑わない女の子と笑いすぎる男の子の、笑顔にまつわる物語

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 憂いを眼差しに含みながら、そっと手を出す。他の女生徒達の興奮は最高潮である。  御手洗君は勝利を確信していた。これで落ちなかった女の子などいなかった。これでこの子もイチコロさ!  そして最後の一押しの台詞を……! 「君には笑顔が似合う……! ほら、そっと微笑んで……」  ところが当の桑折さんは怪訝な顔だ。 「私が笑った所を見た事がないのに、何故似合うって分かるんですか?」 「分かるさ! きっと似合うよ! ほら、微笑んで……」 「……いえ、遠慮しておきます。大体、横入りなんてずるっこ、ダメですよ。他の方に失礼です。最低ですね」  御手洗君はプライドと共にその場に崩れ落ちた。 「大変だー! 女ったらしの御手洗がやられたぞ!」 「えーせーへー! えーせーへー!」 「大丈夫だ、しっかりしろ! 傷は深いぞ致命的だ!」  ぐったりと倒れた御手洗君を男子連中が運んだ先で、勝手にコントが始まっていく。人混みの向こうへと行ってしまったので、もう何も聞こえない。  一方場内では、男連中は胸がスカッとしたと大好評。女子達の間でも、桑折さんのマジメさが光る判定に好感度が上がっていた。 「え、えぇと……思いがけない乱入もありましたが、続けて参ります! 続いては……」  きーんこーんかーんこーん……     
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