笑わない女の子と笑いすぎる男の子の、笑顔にまつわる物語

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「ん~? 何だっけ? あっはっは、忘れた~!」 と言った調子である。これだけ笑われてしまえば、何かをマジメに指摘するのも馬鹿らしい。誰も彼もつられて笑ってしまうのである。一事が万事、こうなのだ。 「天道君見てると、何か落ち込んでても元気出るなぁ」 「そう? だったら嬉しいなぁ! あっはっは!」 「でも悩みとか無さそうよねぇ。羨ましいなぁ。はぁ」 「え~? 僕にだって悩みはあるさ! 例えば、え~と……何だっけ? あっはっは!」 「全然じゃ~ん! 嘘ばっか! あはは!」  これが天道君の日常風景である。騒がしい毎日。誰かと笑いあう普通の毎日。  そんな二人は隣の席同士なので、日直が回ってくれば当然日直を一緒にこなす。  桑折さんはマジメすぎて日誌が真っ黒になるまで書いてしまうから、日誌は適当にこなせる天道君の役割。天道君は背が低いので黒板が消せないから、黒板消しは桑折さんの役割。自然配役は決まっていた。 「窓、そろそろ閉じなきゃ」 「あ、やっといたよ~!」 「そう、ありがとう。日誌出来た?」 「今出来たところ~! 出しに行って来るね~! ゴミ捨て、ちょっと待っててね~!」  あっはっは~!と廊下に笑い声を響かせながら、職員室に日誌を出しに行く天道君。     
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