笑わない女の子と笑いすぎる男の子の、笑顔にまつわる物語

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 天道君は、勉強は出来ないが、やるべき事はササッとこなす。今日も日誌をいつの間にか仕上げ、終わらせている。その辺の能力において、桑折さんは天道君を信頼していた。マジメ、と言う事とはまた違うが、細かい所に気が利いて、何をするにも始める前には段取りが出来ているのでスムーズに事が運ぶのだ。  また、約束を守る、と言う事に関してはいい加減な所がない。クラスメートとの小さな約束ですら律儀に守る。先日も鹿田君との会話で、「一緒に移動教室行こうぜ~」と誘われ、鹿田君は一旦トイレ行くから待ってて、と言い残し、うっかりそのまま特別教室に行くと言う事があった。天道君はニコニコしながら律儀に時間ギリギリまで待っていた。その後鹿田君が謝っていたが、天道君は全然怒りもしなかった。  これに限った話ではなく、天道君が怒った所も見た事がないし、約束を破った事も見た事がない。感心する程しっかりしているのだ。この点においても桑折さんは天道君を信頼していた。あるいはただのお人好しなのかもしれないが。  桑折さんは、一方でちょっと心配もしていた。天道君のあの笑いよう、頭のどこかがおかしいんじゃなかろうか。何故あんなにも笑うのか。彼は悪い人ではないが、全く笑わない自分には全く理解できなかった。  さて、日直のほぼ全ての仕事が終わった。最後はゴミ捨てだ。日直は放課後、教室に二つあるゴミ箱をゴミ集積所に出しに行かなければならない。これは一人でやるには大変なので二人でせっせと運ぶ事になる。     
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