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「…もう少しで誕生日だな、怖くないのか」
きっと愚問だろう、なんなら酷いことを聞いたとすら思う、でも聞かずにはいられなかった、見ているだけで苦しいのに、見ているだけで悲しいのに、痛いのに、今彼女はどう思っているのか、知りたくて仕方なかったのだ。少しでも理解をしたくて、どうしようもなく口に出てしまったのだ。
「…んー」と迷い、1度溜める、悩み、目を伏せ、それからようやっと言葉をひねりだしたように口を開く。
「怖いよ。怖い、痛いし辛い、もう早く死んでしまえば、楽かもしれないって思ってしまうほどにはね」
「…っごめん」
聞いておいて言葉に詰まる、良い返しなんて出来たもんじゃない、いつも前向きな言葉だけを言ってきた彼女がこうして言葉にしてしまうほどまでに追い詰められているのだと再確認すると、後悔と罪悪感だけが胸の中を支配する
けれどそんなことも忘れさせるかのように、気づけば彼女はいつも通りの笑顔を取り戻していた。
「ねぇ、そんなことよりさ、私浴衣着たことないんだよね、お医者様からさ、季節は違うけどいいよって言われてさ、誕生日に着せてもらうの」
「へぇ!いいじゃん、じゃあ俺も着てくるかな、甚平?だっけ」
「え、いいよいいよ寒いでしょ外!風邪ひいちゃうし変な目で見られるよ…?」
「でもどうせならお前と一緒がいいだろ」
そう言うと彼女は嬉しそうに笑う
そんな彼女の誕生日は、一週間後。
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