屋上

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屋上

予想通り、課長の原田重造から「倉場君。」とお呼びがかかった。 (やっぱり来た・・・。)なみは観念して原田の前に立った。 原田はなみを署の屋上へと誘った。 エレベーターで屋上へ上がる間、原田は一言もしゃべらなかったが、そのことがよりいっそうなみの気を滅入らせた。 原田は何から切り出せばいいのか、考えあぐねているようだった。定年を目前に控えた、この男の後頭部のそこここに覗いている白髪を見ながら、なみは申し訳ない気持ちにならざるをえなかった。 網走署の屋上からはうらぶれたビルとビルの間からほんの少しだけ海を見ることができる。今日は曇り空であるにもかかわらず、海は青インクをボトッとたらしたように鮮やかだった。 なみも普段ならばそれを見ていろいろな思いを馳せることができたのだろうが、今はそんなことを考えることはできない。 原田が屋上の手すりに手をかけると、話を切り出した。 「倉場君。ちょっと報告が上がって来たんだが・・・。」 なみは思いきって自分のほうから言った。 「それは、わたしのパートナーのことでしょうか?」 「・・・そうだ。」 原田は苦虫をかみつぶしたような顔になると押し黙った。 二人の間を沈黙が包み込み、折りからのやわらかな海風がさわさわと揺らす木々の音さえも聞こえるほどだった。     
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