プロローグ

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真っ白に咲いた桜の花が風に吹かれ、踊るように揺れている。制服を校則通りに着た生徒たちが、桜をあしらった小さなコサージュを胸に付け、黒色の筒を片手に持ちながら友人や先生方との別れを惜しんでいる。 今日僕、原野歩夢(はらのあゆむ)は3年間の高校生活に幕を閉じる。先生方や友人への別れの挨拶は済ませ、緊張しながら校舎裏で人を待っていた。 ベタではあるが卒業式のこの日に、ずっと好きだった初恋の人を、校舎裏に呼び出しのだ。そして直ぐに彼女は現れた。 彼女は高月俊(たかつきしゅん)。高月さんはボタンが幾つか解れたブレザーを着てやってきた。ショートの黒髪が良く似合う、背が高くてカッコいい彼女を、俺は中学生の頃からずっと好きだった。 何度も思いを伝えようと考えたが、そんな勇気は出なかった。 だが、もう毎日のように顔を合わすことが出来なくなる、という事実が目の前まで来ると、すんなりと覚悟を決める事が出来た。 ああ、こういうところも本当に情けない。僕は震える足に力を入れて、声を絞り出した。 「こんなところに呼び出してごめん。その、伝えたいことがあって…」 「うん。なに?」 彼女は風に吹かれて顔にかかる髪を、手で抑えながら答えた。
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