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覚悟を決めろ、この意気地なし。そう自分を奮い立たせて、緊張で荒くなる呼吸を整えた。
「ず、ずっと前から好きでした! 良かったら、俺と付き合ってください。」
そう言って、俺は勢いよく頭を下げた。
しんと静まり返る空気。彼女の反応が怖くて頭を上げられない。
そのまま数分が過ぎた。僕にとっては何十分にも感じる長い時間。沈黙を彼女が破った。
「一度、顔を上げて?」
その言葉に、俺は恐る恐る顔を上げた。見上げた彼女の顔は、少し気恥ずかしそうに笑っている。
「ありがとう。凄く嬉しいよ。でも、」
『でも』という言葉にがっくりと肩を落とす。ああ、やっぱり僕なんかじゃ駄目だったのか。いや、いいんだ。思いを伝えられただけでも。そう思わないと泣いてしまいそうだ。
「でも私、好きな女の子がいるから。ごめんね。」
彼女が言った言葉を頭の中で反復する。思考が停止し、顔が固まる。今物凄くアホな顔をしているのが、自分でもわかる。
「じゃあ私、この後用事があるから行くね。でも気持ちは凄く嬉しかったよ。ありがとね。」
そういうと、彼女は手を振りながら笑顔で駆けて行った。僕の人生最大の勇気を振り絞った告白は、こうして呆気なく終わりを告げた。
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