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智広とは中学からの仲だ。きっかけはよく覚えていないが、いつの間にか仲良くなっていた様な気がする。
智広は顔が良く近寄りがたい雰囲気から、当時から女子に人気だった。僕が知っているだけでも何人もの女子から告白されていたと思うが、結局誰とも付き合うことはなかったな。
仲が良い筈だが、恋愛の話は全くされたことがない。
そういうのに興味がないのだろうか?
4限を終え、僕は帰りの電車に乗った。この時間はいつも混んでいる。明日は休日なので帰り道に、繁華街へ寄り道をすることにした。
駅を降りると、帰りらしいサラリーマンや学生で溢れていた。
駅のファッションビルからは多くの人が出入りし、駅前では待ち合わせらしい人達が、スマホを見ながら立っていた。僕は駅を出て目当ての店を目指した。
そこは最近出来たワッフルを売る店だ。焼きたての様々なワッフルを店内又は持ち帰りで頂くことが出来る。
前からここに来てみたかったが、並ぶ女性の多さから断念していた。しかし今日はいつもよりは並んでいる人が少ない気がする。
出来れば焼きたてを食べたかったが、流石にまだ勇気が持てないので、今日は持ち帰りで我慢しよう。
駅に戻る帰り道。僕は何となく見覚えのある人影を見かけた気がして、目を凝らした。黒髪を肩まで伸ばしたボブヘアーに派手な化粧。
ファッションに疎い俺には分からないが、パンクのような服を着ていて、髪の毛先は赤く染められている。しかしその顔に見覚えがあった。
忘れる筈がない、だってそれは僕の初恋の、
「…高月さん?」
零す様に出た言葉は、人混みに掻き消された。
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