第2章 結婚式でサプライズ

16/18
前へ
/48ページ
次へ
 おばあさんは恐ろしい魔女の姿に戻り、赤ずきんを怖がらせるとひとくちで食べてしまった。でも、その渋さに驚いてすぐに吐き出してしまう。  そこにいた野兎が気を利かせて魔女に美味しいお水を渡した。  口の中がしぶくて辛い魔女は、慌てて水を飲み干した。  魔女はあっけなく毒水を飲み干してしまい、そのまま死んで枯れ木に戻った。  地下室で火あぶり直前で弱っていた狼を見つけた赤ずきんは、  自分の身代わりになろうとした狼のために涙を流して近付いていく……。  照明が落ちて真っ暗になった。  式場が用意してくれた台の上で、狼の格好をした俺が死んだふりをしている。  案内係の木庭さんから指示を出された夏鈴に照明が当たり、赤いずきんを被ったまま俺のところにやってきてしゃがみこんだ。 「新婦様、新郎様を起こしてあげてください」 「どうやって?」 「ご想像にお任せします…」  木庭さんは俺が頼んだ通りに夏鈴を誘導してくれた。会場で皆と一緒になって紙芝居を見ていた夏鈴にしたら、この展開はドキドキしているはずだ。夏鈴は昔からおとぎ話をアレンジするのが好きで、俺がその手伝いをしてやると滅茶苦茶喜んでくれた。寝入りの時にそんな遊びをしては、夏鈴はしっかりとした字でノートに書き記していた。この話はそんな時になんとなく出来上がった赤ずきんのパロディのひとつだ。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

127人が本棚に入れています
本棚に追加