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夏鈴は化粧直しを終えて髪型を整え始めた。カッコいい。
「怒ってる?」
「怒ってないけど」
「なんか、怖いんですけど」
自分の乱れをすっかり元通りに整えた夏鈴は俺の身なりを整え始めた。こういうの、夫婦らしくてなんか新鮮だな。ネクタイを絞めあげられて、ちょっと苦しい。
「………」
「……夏鈴ちゃん?」
顔が赤い。思い出して照れてるんだろうか……。
髪を直してからドアを開けて、食事の準備をしてもらっている間も夏鈴はバスルームの鏡の前に座っていた。
「私、いい加減嫉妬するのやめたいのに…」と、ポツリとつぶやく。
「嫉妬?」
夏鈴は赤い顔をしたまま涙目になって俺を見上げた。
「…まだまだ時間も回数も重ねていかないとダメなんだって思ったら、腹が立って…」
え……それって………それって。また、何か視えたのか?
「他の女の人としてたこと全部、私が上塗りしたいんだもん。私だけの晴馬に染めたいの…」
思い詰めた顔して、潤んだ瞳でそんな可愛いことを言われたら。もうすっかり夏鈴色に染まっているつもりなのに…。どうして、そんなことを言うの?
「俺はとっくにお前に溺れてるけど?」
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