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そやけど、偉そうにするとは山笠の時だけにしやい。偉そうに、無精(ぶしょう)髭(ひげ)やら生(は)やかしてから。
今日は、優香が付き合ってる男に会って欲しいと言うのだ。どんな男を連れて来るのか知らないが、気に食わないことには、真奈美はすでに面談済みで、「すごく感じが良か人よ」などと言うのだ。
「順番が違おうが。家長に会うとが一番たい!」
怒鳴りつけたいところを、舜はグッとこらえた。日頃から家族一同で、舜のことをまるで明治の遺物だ、ガラパゴスだ、とぼろくそに貶(けな)すのだ。
「ほら、来たよ」
真奈美が浮き浮きと言った。
「いらっしゃい!」
優香が、飛んで迎えに行く。
「お邪魔します」
応接卓にデンと座った舜の前に、件(くだん)の男が現れた。舜の前に正座する。
「初めまして、山内登と申します。よろしくお願いします」
登は深々と頭を下げた。
(僕よりちょっと背が高い。175Cmくらいかな。面長で鼻が高くて、いかにも優香好みの*バター顔だ。メガネはかけとらんけど、コンタクトかも知れんな)
「これ、お菓子買って来ました」
登は菓子折りを真奈美に差し出した。
(如才がない奴だ)
「まあ、まあ、そんなに気を遣わなくても良かったのに」
真奈美は、いそいそとコーヒーを入れ始めた。
優香は登に寄り添うようにしてコーヒーを飲んでいる。
(お前たち、いちゃいちゃして楽しかとも今の内だけやぞ)
舜は心の中で毒づいた。
「今日は、お願いがあって参りました」
登が姿勢を正して、舜と真奈美に相対した。
「優香さんと、結婚を前提にお付き合いをさせてください」
優香が舜をじっと見つめた。お父さん、だめやら言うたら、承知せんけんね!とその目が言っている。
「まあ、二人がそれで良かなら、良かたい」
「ありがとうございます」
登が再び深々と頭を下げた。
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