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「それでは、多数決の結果、私達のクラスの出し物はお化け屋敷に決定ということで!」
9月の文化祭でうちのクラスはお化け屋敷をすることに決まった。そして、神様の悪戯だろうか、くじ引きによって受付当番は私と岡田くんの二人になったのだ。
文化祭までの間は大道具担当の子達に混じってペンキを塗ったり、壁の飾りを作ったりした。岡田くんも、のこぎりで木材を切ったり小道具を作るなどしていた。何度か岡田くんと目が合うことがあったけれど、岡田くんはすぐに目線をそらしてしまうので、そこから会話に発展することはなかった。きっと、岡田くんと目が合うのは私が岡田くんを見ているからで、岡田くんが私を見ているからではないのだろう。
ある日の放課後のことだった。何やら廊下がどたばたと騒がしい。私は作業する手を止めて、ちらと教室から廊下を覗いた。どうやらうちのクラスの男子達がふざけて騒いでいるらしい。この年代の男子はどうにもじゃれたがるので、いつものことか、と思い私は作業に戻ろうとした。その時、一人の男子がひと際大きい声で、こう言い放った。
「こいつ、工藤のこと好きなんだってよ」
予期せぬところから出てきた自分の名前に、私は思わず振り返ってしまった。
私の目線の先にいたのは岡田くんだった。私とばっちり目が合った岡田くんは、あの時のようにぎょっとしたような表情をしたかと思うと、すぐに顔を赤くして、その男子に殴りかかった。
「っせーな!!そんなわけねーだろ!!」
その言葉を聞いた私は、なんだ違うんだ、と思った。告白したわけでもないのに、なんだか振られたような気分だった。私が教室に戻った後も、廊下では男子達がわいわいと騒いでいたけれど、そんなこと私には少しも関係がなかった。
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