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それから私は、西園くんと付き合うことになった。西園くんは優しい。マメだしよく気を使ってくれて、何一つ欠点がなくて、私にはもったいないくらい。それなのに、私の胸が高鳴ることはなかった。何度か遊びに行ったりもした。決してつまらないわけではなかった。けれど、なんだかしっくりこなかった。私にとって西園くんは初めてできた彼氏だから、比較のしようはないのだけど。次第に私は西園くんからの誘いを断りがちになり、進級してクラスが別々になると、連絡を取る回数も減った。別れようか、とはっきり話すこともなく、自然消滅のような形で、私達は疎遠になった。
「むこうに行っても連絡ちょうだいね!こっちに帰ってきた時はまた遊ぼうね!」
そう言いながら結唯ちゃんは、おいおいと泣いていた。私は高校を卒業した後、地方の大学に進学することが決まっていた。卒業式を終えた私達は、教室で卒業アルバムを回し互いにメッセージを書き合っている。
「工藤、これ……」
名前を呼ばれて振り返ると、白い封筒を持った岡田くんが立っていた。進級した後も私と岡田くんはまた同じクラスになっていたのだ。
「あっ落としてた!?これ、大事なものなんだ。岡田くん拾ってくれてありがとう」
差出人の書かれていないラブレターを私はずっと大切に持っていた。私にとって、それはもうお守りみたいなものだった。だけど、それも今日で終わり。卒業アルバムに挟んで高校での思い出と一緒に永遠に閉じ込めてしまおうと思っていた。私のこの想いも全て、永遠に。
「そうだ、よかったら岡田くんも書いてくれないかな?」
私は岡田くんに卒業アルバムを差し出した。
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