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「だから昔の人々は花に想いを託した。人の想いっていうのもまた、不自由で儚いものだからね」
「それならこの花も本当の花よ。だってお母さんが『お祖父ちゃんの病気が早く治りますように』って買ってきたんだもの」
ジズの無邪気な言葉にお祖父さんは悲しげに笑いました。
「まがいものの花に託せるのは、所詮まがいものの想いだけさ。あの子が本気でそんなことを想うものか」
事実、ジズの母親、つまりお祖父さんの娘が、入院したお祖父さんのお見舞いに来たのはそのまがいものの花を持ってきた一回きりでした。ジズはまだ幼かったので知らされていませんでしたが、お祖父さんとジズの母親との間には深い溝があるようでした。知らされてはいませんでしたが、幼い子というのは人の感情に敏感なもので、ジズはお祖父さんと母親にどうにか仲良くしてほしいと思っていたのです。
「きっとお母さんは本当の花が咲いている場所を知らなかったのよ。だから代わりにわたしが本当の花を見つけるわ。そうすればお母さんの本当の気持ちがお祖父ちゃんに伝わるもの」
お祖父さんは懸命に言い募るジズの栗色の髪の毛を優しく撫でました。
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