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「出来上がるのは……飲み物……かな? 効果は……やっぱり分からないや」
私の問いかけにグリンは答えず、引き続き彼にしか見えない「レシピ」に見入っています。
私は最後まで彼の呟きを書き加えました。
―――彼は……グリンは、ある日突然、『特殊なレシピ』を思いつきます。
その時彼の思いつく料理は、それまでに存在していなかった全く新しい物ばかりであり、その多くはラビリンスでしか手に入らない材料を使う物ばかりだったのです。
そしてそれらの材料を用いて作られた食事には……とても特殊な効果が付与されているのでした。
例えば攻撃力を向上させ、例えば強靭な肉体を与え、例えば俊敏な動きを可能にする……。
それらの食事はラビリンスを冒険するタレンドキャリアーにとって、どれも有難い効力を齎すのでした。
王国はそれを大いに喜び彼に特別待遇を与え、軍に所属する事を強要する事無く自由を保障したのでした。
一度作る事が可能となった彼の食事は、その後誰が作っても同様の効果を発揮する事が出来ます。
彼を拘束してその“発想”に枷を嵌めるよりも、普段通りの生活をさせてより多くのレシピを思いつかせる事にしたのでした。
そしてそんな彼の監視役となったのは私、メリファ―=チェキスでした。
本来ならば冒険者となって世界各地を周るか、軍属として王都へと赴かなければならなかったんだけど、その役目を引き受ける代わりに彼の傍に居る事を許可されたのでした。
彼の幼馴染でもあった私は、その任を喜んで引き受けました。
そうする事で彼といつも一緒に居られるんだから……。
彼の“閃き”は特異な技能と王国は認めてるし、私もそう報告していました。
でも……本当は……。
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