レベル2 ラビリンスにて

4/6
前へ
/193ページ
次へ
 ただでさえ陰気なラビリンスの中では、すぐに陰鬱な気持ちが心を染めてしまうのです。  でもグリンにしてみれば、それだけが心に蟠っている訳ではないみたい。  ここでの戦闘は全部私に任せっきりだと言う事にも、少なくない心苦しさを感じているに違いないんだから……。  優しい彼の事だから、女性である私に凶悪な怪物の相手を、如何に格下の怪物とはいえ押し付けるのは忍びないんでしょう。  でもそれこそ、言った所で仕方のない事なのです。  戦闘系タレンドを持たない彼に、このラビリンスに出現するモンスターの相手は荷が重過ぎるんですから。 「さぁっ! 少し休憩したら再開しましょうか」 「あ、ちょっと待って」  立ち上がった私に、グリンがそう呼び止めました。 「何よ? いつまでもこんな所に居たくないでしょ?」 「……うん……でも随分『針ヤマネコの肉』が集まったから、ここで食事でも摂らないかい?」  その言葉を聞いた途端に、私のお腹から「クゥー……」と言う音が鳴ったのです。  戦闘でも起きていない限り暗く静かな洞窟内に、お腹の虫の鳴き声が響きました。 「ククク……」  顔を真っ赤にした私の目の前で、グリンが声を殺して笑いを堪えてます。 「わ……わかったわよっ! 食事にしましょっ!」  そう言って座り直した私は、到底彼の顔を直視出来ませんでした。 「よし! すぐに用意するからちょっと待っててね!」  目に涙を浮かべたまま、彼はそう返事して調理を始めました。
/193ページ

最初のコメントを投稿しよう!

109人が本棚に入れています
本棚に追加