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「……メルッ!」
そんな私に突如、グリンが小さく鋭い声を掛けてきました。
私はその声を聴いて、思わず大きな声を出しそうになりました!
私が彼へと視線を向けると、彼は深部へと向かう方向の暗闇に視線を向けて動きを止めていました。
私はそれを見てある程度の事を察し、傍へと置いていた剣を手繰り寄せました。
恐らく怪物がこちらを見つけて近づいているのでしょう。
右手に剣を掴んだ私は、ユックリとグリンの見つめる暗闇に向けて目を凝らしました。
此方が焚いている炎に照らされて、暗闇に薄っすらと何かの影が浮かび上がります。
―――針ヤマネコだ……。
僅かに見えたシルエットから、私はそう判断してゆっくりと立ち上がりました。
グリンも作業を取りやめて立ち上がり、私の後方へと静かに移動します。
―――……何……? ……大きい……っ!
でも私に見えている針ヤマネコは、今までに倒したどれよりも大きい個体でした。
一回りか二回りは大きく、その威圧感も尋常ではありません!
ユックリと私達の前へと歩を進める針ヤマネコがその全貌を現しました。
「……メル……」
グリンが小さく私に語りかけ、私はそれに答えず頷いて返しました。
―――……間違いない……希少種だわ……。
その姿を見れば、それが“希少種”である事は疑い様がありませんでした。
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