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もし予め「ドライミート」を摂っていなければ、恐らく力負けしていたかも……。
私のタレンドでは、力や攻撃力まで強化する事は出来なかったのですから。
グリンが大きく後退した事を見計らって、私は針ヤマネコを往なし改めて対峙しました。
針ヤマネコも私を標的と見定めたのか、私の方を向いたまま数歩後退って猫科の動物独特の頭を低くした構えを取りました。
それは私が僅かでも隙を見せれば、一足飛びで襲い掛かって来る姿勢です。
私と針ヤマネコの間に、一触即発の空気が凝縮されてゆきます。
でも、その緊張感はそう長く続きませんでした。
先に痺れを切らしたのは針ヤマネコの方だったからです!
「ジャア―――ッ!」
肉食獣独特の咆哮を発したかと思うと、針ヤマネコは私の方へと速く、大きく跳躍してきました!
そのスピードは、先程とは比べ物にならない程だったのです!
だけど、私にはその動きが見えていました!
私はみるみる近づいて来る針ヤマネコの方へと僅かに半歩踏み込み、その巨体を躱しながらすれ違いざまに下方から剣を斬り上げました!
狙い違わず、タレンドで強化された速度によって針ヤマネコの胴体は切り裂かれました!
「……っ!」
その時感じた手応えは他の針ヤマネコよりも遥かに強固な感触で、流石は希少種の体毛だと思わせたのです。
だけどドライミートにより強化されていた攻撃力により、私の一撃は針ヤマネコに致命の一撃を加える事に成功していたのでした!
「ギジャア―――ッ!」
独特の断末魔を上げて、着地した針ヤマネコは口から大量の血を吐き散らしました。
私は振り上ていた剣をそのまま振り下ろして、目の前の猛獣に止めの一撃を与えました。
頭部に致命の一撃を受けた針ヤマネコは、すぐにピクリとも動かなくなり物言わぬ肉塊へと姿を変えたのでした。
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