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「……ほんっとーにゴメンねー……」
目の前のテーブルに並ぶ御馳走を挟んで正面に座ったグリンに、私は小さくなって謝りました。
グリンの鼻には新しい絆創膏が張られています。
言うまでも無くそれは先程私の付けた新しい傷なのでした。
昨日はラビリンスに潜って怪物と戦い、初めて希少種とも戦ったというのに、幸いにも私は殆ど無傷で戻って来れました。
それに比べてグリンは昨日、そして今日と生傷が絶えません。
勿論ラビリンス外でですが……。
「いいよ、いいよ。僕も悪かったしね」
そんな私に、グリンはやっぱり優しく微笑んで許してくれました。
でも、その言葉が更に私を苛むんです。
「……ううー……」
「さぁさぁ、折角の『希少種針ヤマネコの肉料理』なんだから温かい内に食べよう。それにこれは僕特製スペシャルコース料理なんだよ? 頑張ってくれたメルの為に作ったんだから」
落ち込んで中々回復出来ない私に、グリンは穏やかな声音でそう言いました。
そしてその中には、到底無視できない言葉が含まれていたのです!
「スペシャルッ!? 私の為に!?」
お店に出している料理でさえ、いいえ、普段グリンが作ってくれている料理だってとっても美味しいのに、その彼がスペシャル……腕によりをかけて作ってくれたのだとすれば、それはどれ程の美味しさなのか想像もつきません!
それにそれをわざわざ私の為にともなれば言葉もありません!
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