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「うん……でも僕には何の効果も現れなかったんだ……」
そう話す彼の顔は、申し訳ないという思いで一杯になっていました。
彼に効果が現れれば、それは調理系か、もっと大きい括りで技術系のトレンドに効果のある飲み物だと言う事です。
そしてそれであれば、私が試す事は無いのです。
現れた効果が、必ずしもトレンドキャリアーにとって有益とは限りません。
もしかすれば、逆に危険な効力が発現する事もあるのです。
そしてグリンはそれを危惧しているのでした。
「……ううん……気にしなくて良いよ。それは私の、私だけの役目なんだから」
確かに私は、王国より彼の監視や手伝いを仰せつかってます。
でもそんな事とは別に、彼の役に立つなら出来る限りの事をしたいといつも考えてるんですから。
そっとグリンの前に置かれたガラス瓶を手に取り、それを顔の高さまで持ち上げて中身をマジマジと見ます……。
向う側が伺えない程濃く、それでいて粘度が高いのかドロッとした液体に、あまり良い想像が浮かんできません。
良く見ると、中には無数の何かがキラキラと輝いて浮かんでいます。
きっとそれは、苦労して手に入れたあの銀髭なんだろうな……。
「……先に言っておくけど……」
中々飲む事を決断出来ない私に、彼がユックリと口を開きました。
「……少し……覚悟して飲んでね?」
その言葉を聞いて、私は思わず喉を鳴らしました。
先に呑んだグリンがそう言うのだから、きっと覚悟のいる味……なんでしょう。
さっきまで天国かと思う様な時間だったのに、今はそこから一気に転落して地獄一歩手前の気分となったのでした。
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