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―――やだ、何これっ!? 美味しいっ!?
一言で言えば甘い……とても甘い飲み物です。
でもそれは砂糖菓子や果物の甘さとはまた別の、何だか得も言われぬ甘さだったのです!
それに粘度の有る液体とは思えない程後味も爽やかでした!
僅かに口の中で何かが弾けた様な感触はあの銀髭かしら?
兎に角、一つの飲み物としてはとっても美味しい物だったのです。
私がバッと目の前のグリンを見ると、彼はニヤリと口角を上げてこちらを見ていました。
彼はこうなる事を楽しんで、私に一芝居打ったのです!
「どう? お味は?」
今にも吹き出しそうな顔をしたグリンがそう言いました。
さっきまでの覚悟から一気に解放されて、何だか恥ずかしくなった私は、顔を赤くなっているのを感じながら瓶をテーブルの上に叩き置きました。
「美味しいわよっ! グリン、あんた知ってて言わなかったわね?」
グリンに担がれたという気持ちと、美味しかったという気持ちがない交ぜになっていて、抗議する私の言葉もそれ程の迫力とはなりませんでした。
「ははは! ごめんごめん。……それで、どう?」
そこで私は、肝心な事を忘れている事に気付きました。
彼が出してくれた飲み物は私を驚かせる訳でも、ましてや喜ばせる為でも無く、“何かしらの付与効果のある飲み物”なのです。
「……ん―……特に変化は……ないわねー……」
私は立ち上がって、体の至る所に力を入れたり体の内側に意識を向けたりしました。
攻撃系タレンドに何かしらの影響があるのなら、それだけで変化に気付けるからです。
でも今回は何も変わった事は起きませんでした。
「……そうか……やっぱり僕やメルにも変化が出ないという事は……この飲み物は『魔導士系タレンド』向けの飲み物なのかもしれないね……」
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