食の街「メッソ」 

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 道中に何のトラブルも無く、2日目の夕刻には無事にメッソの街へと辿り着きました。  ここは、西にあるオーディロンの森から取れる豊富な木の実やきのこ類、野生動物の肉を使った料理が人気なのです。  また果物も多く取れ、恐らくこの大陸で随一の食文化が栄えた街じゃないでしょうか?  グリンも滅多に来ないこの街に興味津々と言った風で、さっきからキョロキョロと落ち着きがありません。 「……もう……グリン、料理も良いけど、先に宿を決めてからね」 「あ……ああ、勿論。分かってるよ」  本当はどこまで分かってるのか怪しいけど、そこにはツッコまないで早々に宿を決めて、とりあえず有名な酒場(レストラン)へ食事に向かいました。  そこは流石に人気の高い酒場だけあって、広さだけでもホーラウンド酒店の三倍はあるかな?   従業員も多く、ホールでは女の子達があくせくと動き回り、厨房の中からは活気に溢れた声が聞こえてきます。 「いらっしゃいませデスーっ! 2名様なのデスか?」  入り口で圧倒されていた私達に、綺麗な茶色い髪を両側で三つ編みにした、少しそばかすの残した可愛いウェイトレスが声を掛けてきました。  か……可愛らしさでは私も負けてはいないはず……だけど、それでもこんなに女の子らしい振る舞いでは、少し負けちゃってるかな……? 「え……ええ……」  声も出せないでいるグリンに変わって私がそう答えると、彼女は「こちらのお席へー」と快活に案内してくれます。  ボーっとしているグリンを引き連れて、私達は案内された席へと着きました。 「……可愛らしいウェイトレスさんだったわね?」  まだ心此処に在らずなグリンに、私はそう声を掛けました。  声音に若干の険が入っているのはご愛嬌と言う事で! 「……へ……? そうだったの……?」  でも、彼の意識は全く違う方向へと向かっていた様でした。  よくよく彼を見ると、キョロキョロとした視線は、隣のテーブルやウェイトレスさんが持っているトレーを行き来していて、時折鼻を鳴らして匂いを探っています。
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