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「……あっきれた……ほんとにあんたは色気より食い気なのねー……」
どうやら彼は、この店で振る舞われている様々な料理に興味が行っていた様です。
ちょっと安心したってのはあるけど、ここまで料理バカと言うのもちょっと……。
「あ……あはは……」
私の半眼から繰り出す視線が彼にも突き刺さったのか、グリンは苦笑いをして私に向き直りました。
「ご注文はお決まりになりましたデスかー?」
その時、さっきの可愛らしいウェイトレスさんが注文を取りに私達のテーブルへとやって来ました。
「とりあえず……エール酒をジョッキで二つ……それからー……」
私はグリンに注文の主導権を与えつつ、飲み物だけを先に彼女へと告げました。
それを察したウェイトレスの女性も、グリンの方へと視線を送ります。
「……うん……この『豚の香草焼き』と『季節の野菜サラダ』を頼むよ」
メニューに少し目を通したグリンは、特に迷う事無くそう注文しました。
「「……え……?」」
その言葉に、私とウェイトレスの女性が同時に声を上げました。
それは聞き取れなかったと言う訳では無く、その注文が意外だったからに他なりません。
「あれ……? 何かおかしかった?」
そしてグリンは、私達の反応に戸惑った様な声を上げたのです。
彼の注文は別段おかしいって訳じゃありません。
でもこの街に訪れた者なら、とりあえずこの街を一気に有名とした「山鳥の木の実詰め香草蒸し焼き」を頼むのがポピュラーであり、私もそう考えていたのです。
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