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「……お客様―……わかってらっしゃいますデスねー……」
でもグリンの問いかけに、ウェイトレスの女性は感心した様にそう言葉を漏らしました。
ただ私には、グリンが何を分かっているのかが分かりません。
不思議そうにグリンと彼女を見比べる私へと、彼は微笑んで説明を始めました。
「この時期の山鳥は、卵を産んだ後で味が落ちてイマイチなんだよ。それに木の実の時期も秋が本番だから、この時期に使われるのは去年採ったのを保存していた物なんだ。味も風味も落ちちゃってるんだよ」
「そうなのデスッ! 美味しい事に間違いはないんデスけど、やっぱり一味も二味も落ちちゃってるんデスねー……それよりもこの時期は、農家で育てた豚が脂の乗りも抜群なのデスよーっ! それを季節の香草で焼いた物はもー、絶品なのデスよーっ!」
彼の後を継いで話した彼女の説明で、私にも漸く納得が出来ました。
なる程、特産料理にも「時期」があって、場合によってはそれよりも美味しい物が存在するって事なのね。
「まったく……分かってないお客様が多いんデスよねー……そもそも……」
「じゃ、じゃー、それでお願いね?」
何かのスイッチが入ったのか、説明に拍車が掛かり出したウェイトレスの女性を促してその話を遮りました。
このままじゃあ、グリンと二人で料理談議に華を咲かせてしまいそうだったのです。
「あ……ごめんなさいデスーっ! すぐに持ってきますデスねーっ!」
彼女は元気よく頭を下げると、小走りで奥の厨房へと向かって行きました。
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