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「……んー……お伽噺で知られている内容以上の事は私も聞いた事無いデスよー……? この街で魔女に会ったって人も聞いた事ありませんデスねー……」
人差指を口元に当て必死で記憶を探っていた彼女でしたが、やはり何か情報を引き出す事は出来なかった様です。
酒場と言う場所柄を考えると、少なくない情報が行き交っている筈で、そんな場所で働く彼女が小耳に挟んだ事が無いという事は、多分誰に聞いても同じ様な返答しか返ってこないでしょう。
再びお辞儀をした彼女が下がったのを確認して、私はグリンに向き直りました。
「……どうする、グリン? ホントに魔女がいるかどうかも怪しいみたいだけど……?」
今更ながらに私はグリンへと確認を取りました。
誰も会った事さえ無い伝説だけの魔女だとしたら、本当に空想のみの存在だと言う事に間違い無いでしょう。
明日森に向かって散策したとしても、全くの無駄足になる事請け合いなのです。
「……とりあえず行くよ。魔女がいなくても、オーディロンの森にはあそこでしか採れない野菜やら香草があるからね。是非とも持って帰りたい!」
なる程ねー……。彼も魔女の事は話半分で、本来の目的はそこにあったのね。
まぁ、私としてはグリンと森を散策出来るってだけでも嬉しいんだけどね。
私達は明日の事も考えて、食事を済ませると早々に宿屋へと引き込みました。
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