お伽噺の森の魔女

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「昨日はあの料理を頼まないで正解だったわね」 「ははは、そうだね。図らずもだけどね」  私が獲って来た山鳥を捌きつつ、彼は笑いながらそう言いました。  グリンは今獲って来た山鳥と、さっき採集した香草や木の実を使って、メッソの街特産料理の「山鳥の木の実詰め香草蒸し焼き」を作っています。  彼の手に掛かれば、あの町の特産料理も再現可能なのです。  もっともグリンに言わせれば、それ程難しい料理じゃないし、元々は猟師料理だと言う事で、こういった野外での野宿に最適な料理だと言う事です。  暫くすると、辺り一面に得も言われぬ美味しそうな匂いが漂い始めました。  今の時期、山鳥は卵を産んだ直後で旨味も落ちているという事だけど、この匂いを嗅いだだけではとてもそうは思えませんでした。  踏み慣らされていたとはいえ、流石に一日森の中を歩けば疲れもするしお腹歩減ります。  私のお腹も、その匂いに我慢出来ないと言った様で活発になってきました。  ―――グゥー……。  どこかで聞いた事のある音が周囲に響き渡りました。  グリンはその音の大きさに、思わず驚きの眼を浮かべて私の方を見ました。
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