お伽噺の森の魔女

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「ち……違うわよ!? 今のは私じゃないんだからね!?」  でも、そうなのです。  今の音は私のお腹が奏でた音じゃないんです!   でもそれじゃあ、一体誰が……?  ―――パキッ……。  その時私の後方で、僅かに小枝を踏み折る音が聞こえました。  さっきの音と枝を踏み折った様な音……。  そこから考えられるのは一つだけです。  私はグリンに立てた人差し指を唇に当てて、声を出さない様にゼスチャーで指示しました。  彼も私の意図を察したのか、声を出す事無く頷いて返答しました。  ―――スゥ―――……。 「わぁっ!」  ―――ガサガサッ!  私が突然、思いっきり大きな声を出した途端、後ろの草陰から葉音が聞こえました。  恐らく私の声に驚いて動揺したのでしょう。 「そこに誰かいるわね? すぐに出て来るなら良し、出てこないなら、弓矢の雨を降らせるわよ?」  私はそちらの方へと弓矢を構えて、少し低い声音でそう告げました。
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