シャルルマンテ=ウェネーフィカ

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 ―――45分前……。 「……魔女っ!? あんたがこの森に棲む、伝説の魔女だって言うのっ!?」  私はグリンと顔を見合わせて、目の前にいる魔女「シャルルマンテ=ウェネーフィカ」と名乗った少女に再度そう問いかけました。 「あなた、耳を不自由にしているのかしら!? 先程(わたくし)は間違いなくそう名乗った筈です! それが理解出来ない様なら、もはや話す事など何もありません! 今回は何もせずに見逃して差し上げますので、今すぐこの場所から立ち去ると良いでしょう!」  グリンの優しい声音で精神的に回復したのか、シャルルマンテは殊更高慢な物言いでそう答えました。 「……ねぇ、あなた……その話し方……ちょーっと止めてもらえないかなー……? すーっごく癪に障るのよねー……」  彼女に矢を向けて弦を引き絞りながら、私もなるべく優しい物言い(・・・・・・)で彼女へと注意の言葉を送ってあげました。 「……ひっ!」  鋭い(やじり)を向けられて、シャルルマンテは小さく悲鳴を上げて半歩後退りました。  でもここで、私は一つ疑問が浮かび上がったのです。  先程から自分は魔女だと言い放っているシャルルマンテですが、一向に魔法を使う素振りがありません。  魔法をこの目で見た事は今まで一度も無いんだけど、それでも弓矢よりは強力ではないかと想像していました。  もしそうなら、こんな弓矢は彼女にとって何の脅しにもならない筈です。
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