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オレは姫川さんへと向き直り、すみません、と頭を下げた。
「えと……オレ、いつも助けてもらって、そのうえこんなのまで……オレばっか、申し訳ないですし……」
それらしい言い訳をおずおずと並べ、遠慮がちに姫川さんを盗み見る。
「だからその、怒らないで……機嫌直して欲しいというか……」
すると姫川さんは顔を上げ、まっすぐにオレを見た。
「おまえの気持ちはわかった」
「……すんません」
理解を得られ、ほっとしたその矢先――。
「なら勝負しようぜ」
……は?
「勝負って……」
なに?
「ズルくなく正々堂々。一方的じゃなきゃいいんだろ?」
そう言って、姫川さんはにやっと笑う。どうしたって嫌な予感しかしないのだが。
「……オレ、トイレでいいんですけど……」
次はいったい、なにを思いついたのやら……。
やはりこのひとは一筋どころか二筋でも三筋でも、縄なんかでは収まらないのだ。
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