koi ≫ 来い?

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◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆  イッてすぐ深い(ねむ)りについたせいか、翌朝、オレは鳥の声とともに目を覚ました。お(つか)れ気味の姫川(ひめかわ)さんは、すやすやとベッドの上で(ねむ)っている。ヘッドボードのメモ帳をそっとのぞいて、今日やるべきことを確認した。重要な()(あん)が1件ある。よりによって今日かと思うが、反面(はんめん)、心の準備はできあがった。そんな気の重い1日を始めるため、音を立てずに布団を片付け、朝食の準備をする。  どことなく身体(からだ)(いた)い。長いあいだ、不自然な体勢で力をこめていたからだろうか。  でも、くたびれてたって今日も仕事だ。  米を()ぎ、炊飯ジャーへとセットする。いくつかおかずを準備して、それから包丁を手にローテーブルでリンゴを()いた。最近は季節感がない。そう思いつつ、つい買ってしまった代物(しろもの)だ。けどオレの上司はそんなことすら知らないだろう。興味もない。  くるくるとテンポ良く()いていると、ふと視線を感じて手元から顔を上げた。ながめれば、姫川(ひめかわ)さんが()(どう)()りせず、ベッドの上からじっとりこちらを(にら)んでいる。(こわ)い……まるで(のろ)いの人形みたいだ。起きたのなら声くらいかけてくれ。  (いぶか)る口調で、なんですか、とたずねやると、姫川(ひめかわ)さんはちらっと一瞬、テレビのほうへと視線を()げた。しかしすぐに、10分()ったら起こせ、と()げて、不機嫌(あら)わに身体(からだ)を反転させてしまった。うとうとどころか、すでに覚醒していたはずなのに、たった10分、ベッドの上でなにをするというのだろうか。考えごと? いやいやいや、姫川(ひめかわ)さんには似合わない。起き抜けの頭をもって、なにかを考えられるようなひとじゃない。ならばなにを? もぞもぞと背中が動いている。なんだ? 気になって立ち上がる――と。  うわ。()り紙、()ってる…………。  清々(すがすが)しい朝を(むか)え、しかし姫川(ひめかわ)さんは(あい)()わらず理解不能な人物で……。  どれがオレの(ほん)()なのか。(えら)ぶのは、オレだ――。 ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆
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