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姫川さんと安藤さんをかき混ぜて2で割りたい。そしたら多少は気が休まると思うのだが。もちろんオレの。
……バレてねー……よな?
青痣の原因はタンスの角にぶつけたのだとみずからで流しておいた。今どきタンス? と訝られたがそれも上手くごまかした。目に留めたのは明らかなのに、理由を訊きさえしなかったのが逆に怖い。その緊張感に結局オレが耐えきれず、たずねもされない負傷の理由を馬鹿みたいにアピールしていた。
それだってやむを得ない。他人に興味がないといえ、安藤さんは姫川さんとは違うのだ。
そもそも、今までふたり一緒に出勤して来たことなどなかったのだから、それだけでもあの日になにかしらは気づいているはず……なのだが。
なのに訊かない。肝心のツボは突いてこない。そして……言えない。
まさか姫川さんとあんなことまでしたなんて……。
……展開の速度が異常過ぎる。
確かに安藤さんには助言をもらった。とはいえ、相応にとるべきはずの準じた過程をものの見事に飛び越えている。しかもその理由が曖昧とくれば、短絡どころかこれではオレが野獣みたいだ。姫川さんに襲われた、なんて手前勝手な言い訳にしかならないし、もしそんなことを言ったなら、揚げ足をとる以前に白い目で見られることは間違いない。だから気が気じゃないというか……。
なにより、問題は姫川さんの態度である。
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