koi ≫ 来い?

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koi ≫ 来い?

 姫川(ひめかわ)さんの言いつけどおり、オレは窓を閉めクーラーを付けた。(たか)()()(どう)を胸に、姫川(ひめかわ)さんが立つその対面で()(すく)む。中途半端に投げだされた男竿は、それでも精気(おとろ)えることなく、いくぶんの山となってひたすら前へとそびえていた。 「ルールは単純。決着がつくまで相手から手を(はな)さないこと」  その言葉に、オレは小さく(うなづ)いてみせる。 「射精をした瞬間、勝敗が決まる。だしたら負けだ。手を(はな)しても(しか)り。わかったな」 「……わかりました」  了解をかえしつつ、()(たい)はなぜかよくわからないことになっていた。こんなこと、現実として起こってもいいのだろうか。しかし(げん)に今、姫川(ひめかわ)さんは壮絶(そうぜつ)たる(いさぎ)()さで、躊躇(ちゅうちょ)なく下着を()ぎ捨てている。だぶついたTシャツの下は、()きだしの()(あし)と男性特有(とくゆう)の生殖器があるだけだ。それはもう青年漫画さながらの、ミラクルなお姿である。  ……う、鼻血でそう。  血流とともに下半身が(うごめ)いて、今更(いまさら)ながら(あわ)ててそこから視線をはずす。ようやく()かせた短パンなのに、短パンどころかパンツまで……オレの苦労はなんだったのか。 「なんか下だけ()ぐとマヌケだな」  ()(おう)()ちした姫川(ひめかわ)さんが、あはは、と笑ってオレを見た。同じテンションを(たも)とうにも、当然、今のオレにそんな()(ゆう)などありはしない。  人間(ばな)れしたガラス細工のような風貌(ふうぼう)で、デスクに頬杖(ほおづえ)をつきながらじっと原稿を(にら)んでいる、溜息(ためいき)のでるような()(れい)(ひと)とは別人である。
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