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koi ≫ 恋?
オレの中でやばい出来事が起こっている。
「あ」
デスク横から声がするたび、ぎくりと身を竦ませる自分が我ながら痛々しい。
「ど、どうか……しました?」
「タバコきれた」
なんだよ……。
ほっと胸を撫で下ろすと、姫川さんは伸びるように背中を椅子へと撓らせた。
「あーーー身体痛え。年齢なんてとるもんじゃねえな、りん」
「えっ? いえ、その……そうですか、ね……?」
相槌をうちつつも、今のオレには相当な問題が発生しているので、その言葉にはどうにも同意しがたくて……。
「おまえもそうやってぽやぽやしてると、あっという間に俺みたいなジジイになるぞ」
「…………ジジイ?」
そうです。そうなのです。
あれからオレは今まで以上に、姫川さんがおっさんに見えないのです……。
「……はぁ……」
……集中できん。
オレはディスプレイ上に広げた宛名シールを印刷しながら、深く溜息をついた。
先週、姫川さんと触れるようなキスをした。なりゆきの、それこそ悪ふざけの延長みたいなものだったけれど、しかしオレはあの夜からひどくこのひとを意識している。
それはもう、敬意と呼ぶには相応しくない過重さで……。
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