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侵攻編 1
我輩は悪の帝王である。
宣戦布告はすでに済ませた。
怪人や戦闘員による毎朝、出社前のゴミ拾いもだいぶ定着してきた。
さあ、いよいよ侵攻の時だ。
「行くぞ。者どもッ」
「どこへですか?」
「……………………」
どこへ行こうか?
「正義だ。正義を潰させろッ」
ふと、怪人クモ男が言う。
最初に作っただけあって、荒削りな怪人だ。
しかし荒削りながら、それで我輩は閃いた。
「そうだ。悪とは正義を潰してこその悪。ならば正義をこの世から無くしてやるのだ」
「おお。して、正義はどこにッ」
「それを探すのだ。街を徘徊し、正義を見つけ次第、叩き潰してやれッ」
「「「おおッ。帝王様、万歳ッ」」」
こうして我輩達、悪の(秘)タナカサブロウは夜な夜な街を徘徊したのである。
1ヶ月後。
「帝王様、大変です」
怪人アイキューが慌てて駆け込んできた。
「どうしたのだ?」
「警察が来ています」
「警察だと。面白い。相手をしてやろうではないか」
「いや、それが……」
「なんだ?」
「ウチが夜のパトロールしているせいで、最近はめっきり街で犯罪がなくなったらしく、その、……感謝状を贈りたいと……」
そういや、怪人にビビって悪そうな連中、みんな街からいなくなったなぁ。
「どうしますか? 帝王様?」
「ええっと、……『面白い。この悪の帝王、むざむざと貴様らの誘いに乗ってやろうではないかッ』と伝えろ」
「……あ、つまり受け取りに行くんですね……」
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