9人が本棚に入れています
本棚に追加
「……い王様ッ。帝王様ッ」
ふと、ダイブツーの声で我に帰る。
「良かった。ボーっとしてたんで心配しましたよ」
「ああ、すまんな」
ふと気がつけば、眼前には青とオレンジの混ざり合う鮮やかな夕焼けの景色が広がっていた。
きれいだ。
茜色の雲が流れていくのを見ながら、我輩は貰った飴を口の中に放り込む。
手の中ではあんなに気持ち悪かったのに、口に入れた飴は驚くほどに美味かった。
程よい甘さが疲れた体と脳味噌に染みわたるのだ。
……なんだろう。世界征服もこんな味がするのだろうか……。
そんな思いが浮かんで、つい、夕陽に向かって叫んでみた。
「我輩はぁぁッ、悪の帝王であるううぅぅッ」
「帝王様? 何やってんすかッ」
「なんとなくだ。気にするな」
「気になっちゃいますよッ。……でも、まあいいや。それより気になることがありますからね」
「ん? 気になることとは、なんだ?」
「いや、俺らってどこに行けばいいんです?」
「…………ん……?」
そう言われると、我輩が回想に耽っている間に、もうけっこうな距離を進んで来たな。
ちょっとばかり厭な予感がする。
「ヒーローどもよ。オマエ等の家はどこなのだ?」
「……うむ。……どこじゃったかのう?」
「やっぱり認知症かッ」
最初のコメントを投稿しよう!