布告編

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布告編

『日本政府よ。 我々は(秘)タナカサブロウである。 我々は世界制服の第一歩として、この日本国をいただくことにした。 問おう。 貴様らに真の正しさはあるのか? 貴様らに真に義する心はあるのか? 我々は悪を行使する。 生半可な正義など、我々の前では無意味。 我々の侵攻に、すぐに屈することであろう さあ、おとなしくこの国を我々に明け渡すが良い』 おそばせなから、毎度おなじみ悪の帝王である。 我輩は今、日本に対する宣戦布告の文章を、部下の怪人アイキュー書かせた。 その確認をしているところである。 「アイキューよ」 「はい。どこかおかしなところでもありましたか?」 「……日本政府は、『御中』って敬称付けなくて大丈夫かな? 全国に発信するわけだしさ。企業イメージもあるしさ……」 「……ほんと、脱サラ根性抜けないっすね……」 と言うわけで、出来上がった書き直しは、 『日本政府御中 秘密結社タナカサブロウ 代表取締役社長 悪の帝王 貴政府におかれましてはこの度、ますますご繁栄のことお喜び申し上げます。平素は格別の御厚配を賜っているかは不明なところですが、ひとまず誠に感謝いたします。 さて、この度は宣戦布告をするとともに、弊社における日本乗っ取りの概要を以下にまとめさせていただきますので、ご検討のほど、よろしくお願いいたします。 記 1.世界制服の目的 (そろそろ堅苦しいので以下省略)』 「……………………」 「いかがですか?」 「……悪っぽくないな……」 「あんたの指示だろッ」 「この『記』は『鬼』に変えてみたらどうだ?」 「知らないよッ。まあ、命令ならやるけどさッ」 その後、数回の手直しの末、出来上がった文書。 「ところで、帝王様。これはどこに出せばいいんですか?」 ふと、アイキューが尋ねてくる。 ……そういえば……。 「郵送するとか、……じゃないか?」 「誰宛ですか?」 「……わからん……」 我輩は悩んだあげくに、 「とりあえず我輩が市役所に持って行ってみよう」 「え? 窓口あるんすか?」 「なんとかなるだろ」 こうして我等の宣戦布告はなされたのであった。
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