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それをちらちらと見る私。なぜだかわからないが直視することも恥ずかしい。
まさか三十を過ぎている男が恋愛対象になるなんて。けれど、今じゃ同級生やテレビの中の同世代のアイドルよりよっぽど男だ。触れたいと思う相手は、今じゃ先生だけなのだ。
でも、私は、先生のことをまったく知らない。正確な年齢も知らないし、どこに住んでいるのか、結婚しているのか、なにもわからない。
先生は、結婚指輪はしていないけれど、背も高く、おじさんのわりにいけているから普通ならとっくに結婚しているはずだ。でも、他のあきらかに既婚で子供もいる先生たちとはどことなく雰囲気が違っているから意外にもまだ独身かもしれない。独身だったら嬉しいなあと私は思う。
先生をただ見ていることしかできない私とは反対に、茜ちゃんは、藤原と二人で出かける約束をした。近所のショッピングモール内にある映画館に一緒に映画を見に行くだけなのだが、茜ちゃんは、まるで結婚が決まったかのような浮かれようだ。気持ちを素直に表に出せる茜ちゃんが羨ましい。
私は、想像してみる。先生と映画。
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