ひみつの片思い

4/6
前へ
/6ページ
次へ
 想像だけで私は、体が熱くなるのを感じた。同時に絶対無理だと思う。先生を意識するようになってから、授業のことで質問することすら緊張してできなくなってしまったのだ。話しかけることもできない自分がその先へ進むことはありえない。  先生と無駄話ができる子が羨ましい。以前は、私もそのひとりだったけれど、今は恥ずかしくて無理だ。近づきたいのに近づけない葛藤。こんな自分がもういやだ。  先生は、どちらかというと生徒に対してフレンドリーなタイプだ。生徒との距離が近いタイプの先生だと思う。髪を短くした女子に、 「そっちの方が似合うなあ」  と、言ったりする。また、生徒の文房具などで珍しいものがあると、手に取り、 「えっ、これが消しゴム? 最近の文房具は、面白いデザインのもんがたくさんあるんだなあ」  と、言ったり。ほかの先生は、あまりこういうことはしない。  私も先生の方から何か話しかけてこないだろうかと毎回数学の授業の時は、ドキドキしているのだが、なにもない……。地味に悲しい。  そして、自分の気持ちをどうすることもできぬまま夏休みに突入。  これがドラマとかなら主人公は、街でばったり先生に会ったりして、制服ではなく私服の彼女にドキリとしたりして、どういうわけか仲が進展するのだ。 「でも、現実には、ありえないわ。そんなことになったら先生、淫行で捕まるし」     
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加