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来訪者
翌日の午後、三連休を出張に充てた泉は代休をとった。
小百合は泉の作った朝ごはんを犬のように食べながら、途中何度も顔をあげ、「やっぱり姉さまの朝ごはん最高」と賛辞の言葉を贈り、職場へ駆けて行った。
和香は「炭素化してないタンパク質最高」と満面の笑みでがっついていた。
午後になり、泉は祓いの書物を本棚から引っ張り出し読みふけった。
何故、柏手の効果が無かったのか、空き家にいたあの女性の霊は何者なのか。
考えても、答えが出てこない。本来なら霊が近寄ることさえできない小百合の札もはがされていたし、あの霊の特性が問題なのか。
「うーん、ダメだわ考えても答え出ない!」
そんな泉の傍に座って、膝を抱えスマホをいじりながら和香が、
「うちもびっくりしたけど、あの霊、悪い感じはしなかったデス」
とつぶやく。
「そうなのよね、もっと根本的なところで何かを見落としているような、そんな気がする」
泉が思考の中で答えとなるヒントを寄せ集め、濃い目に淹れたコーヒーを口に運んだところで、前触れもなくインターフォンが鳴った。
「おーい、オイラだ。お嬢達だれかいるかー?」
マイクを通した声だが、確かに聞き覚えるのある、やや高い男の声。
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