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小百合はついに泣き出してしまった。太い黒縁のメガネの奥から大粒の涙がポロポロと頬を転げ落ちた。
「仕方ないよ、お姉ちゃま。ダレでも得意なものとそうでないモノがあるカラ」
小柄な和香は椅子をとんと降りると、ベソをかいている小百合の肩をぽんぽんと叩き、キッチンに入り、大きな円錐形の薬缶いっぱいに水を入れコンロにかけた。
「和香ちゃん、美味しいですわねこれ」
インスタントラーメンを啜りながら、先ほどまでの泣き顔は何処へやら、小百合は満面の笑みである。
「限定品の『地獄のキチラー』だヨ。具までついてて結構いケルでショ」
和香は得意げだ。
ふと箸をとめ、小百合が俯いて言った。
「でも、月曜まで、ご飯どうしましょうか」
姉の出張に先立ち、ご飯作りは任せてくださいと胸を張った小百合は、まさか自分自身がここまで料理音痴だとは思わなかった様だ。
しかし和香は気にする様子もない。
「お昼は外食かコンビニおにぎり、夜はスーパーの総菜にしようヨ。朝はカップラーメンのストックでなんとかなるヨ」
妹の楽観的にみせて其の実姉の気持ちを慮った言葉に、小百合は嬉しくもあり、恥ずかしくもあった。
「そうですね。そうしましょう」
消え入るような声で小百合が頷いた。
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