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祓うチカラ
「すまないね、出張帰りで疲れているっていうのによ」
村山は懐中電灯を片手に振り返り、泉に礼を言う。
「まずは、モノを見せていただかないと、仕事できるかどうか判断できませんから」
泉が言うと、
「工期が迫ってるんで、できるだけ急いで貰えんかなあ。さっき聞いた話じゃ、祓い料は、不動産評価額の5%っていうじゃないか。この建物は償却が進んで、評価額はもう二束三文だ。それじゃあ、嬢ちゃんたちに悪いから、俺が請けた金額の5%を渡そう。250万円の5%で、12万5千円でどうだね」
「請けます!!」瞬間、泉の両の目は¥マークになっていた。
建物は古く白い総二階の洋館だった。三十年も人が住んでいないものだそうだが、造りが良かったため、朽ちて危険家屋になることもなく、現在に至っているという。
村山は玄関の鍵を開け、懐中電灯で室内を照らした。泉、小百合、和香の順にあとに続く。
室内は蜘蛛の巣だらけで、埃が積もってはいるが、作り自体は確かに良かった。
建築が専門の小百合が、
「これは」と感嘆のため息をついた。
玄関の框ひとつにしても、とても良い木材を使っている。リビングの上を渡る梁も、集成材ではなく、檜の1本物だ。
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