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夜の帳は、完全に落ちていた。
とあるタワーマンションの中層階の一室。
完璧に部屋を締め切る、モスグリーンのカーテン。月明かりさえ見えない今夜、電気をつけた部屋の中は、眩しいほどに、明るい。
部屋の中には、男が二人いる。
一人は、明るい黒髪をお洒落に整えた男。仮に、Oとする。小さく白い顔。二重のアーモンドのような瞳。すっと通った鼻筋。薄い唇。どこからどう見ても、『美しい』と評される顔。そんな彼は、長い脚を投げ出すようにして座り、手元のグラスを煽る。
もう一人は、茶色がかった髪の男。Mとしておこう。鼻が若干大きく、横に広がっているが、目鼻立ちのバランスはよく、整った顔であることは間違いない。しかし、黒髪の男と長年一緒にいるために、彼の顔に対する自己評価は、底辺まで落ち込んでいる。横に座る黒髪の男を心配そうに見つめる目は、悲しげに垂れていた。
黒髪は、俳優だ。整った顔と、まずまずの演技力で売り出しに成功したが、とある事情で、今は伸び悩みの時期にいる。
茶髪は、そんな黒髪のマネージャーだ。今は伸び悩んでいる彼が本来の力を発揮できるよう、彼を必死に支えている。
これは、そんな二人が、それぞれ抱える、『秘密』の話。
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