私が嫌いなアイドルについて

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それからはまた、徹が家にいない日が続いた。 言い争った翌日、「ごめんね」で始まるメッセージがLINEで送信されてきたが、李子は既読にもせず数日放置していた。 件の土曜には、やはり早彩達同級生と約束通り映画館に行ったけれども、嘘つきにならずに済んだはずなのに、重苦しい気持ちであまり映画に集中できなかった。 ――ごめんね。李子ちゃんの都合も確認せずに、お買い物できるよ~なんて決めてきちゃって。いきなりじゃ、李子ちゃんの都合がつかないよね。お友達との約束を破りたくない、李子ちゃんは偉いね。お父さん感心しました。お父さん自身、いろいろ反省しました。今度は何が食べたいか、そのうちLINEでもメールでもいいから教えてね。 自分の狭量さが嫌になるような、徹からのメッセージが、意識から離れなかった。 私がもっと大人になれば、いつか、父と和解できるだろうか―― 予鈴が鳴り、次の授業の教科書とノートをロッカーから引っ張り出していると、廊下の向こうで男子生徒が「マジかよ! すげえ!」と叫んだのが聞こえた。 なんだなんだ、と教室の中からも顔がいくつも覗く。 その男子生徒は友人と連れだって走っていってしまったのだが、その前に「有名人だってよ!」とクラスメイトらしき生徒に興奮して言っていた。 その中の一人に、「何かあったの?」と訊いてみると、「よくわかんないけど、保護者になんか芸能人いるらしいよ」と言われて、ようやく思い出した。 授業参観週間だった。 自分以外にも芸能人を親に持つ子がいるのかな、知り合いになれないかな、などと李子が考えていたところへ、「お前ら本鈴鳴ったぞー教室入れ!」と教師達が大声を出してやってきたので、生徒達は校庭や廊下を未練がましく見つつも、席に着いた。
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