おとしもの

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おとしもの

誰だ、この鏡に映っている美しい女性は。 燃えるような真紅の髪と藍色の双眸は、色白な肌によく映える。 ニコリと笑えば、後光が差すほどに眩しい。 一体これは誰なのだ……あ、わたくしのことか。 わたくしが姿を現せば、社交界が騒ぎ立てるのも仕方がないことだろう。これほどまでに美しい人間がいれば、しかも1度舞踏会に参加してしまえば、それはもうお祭り騒ぎになってしまう。 まぁ実際、わたくしは何の考えもなしに舞踏会に参加してしまったせいで、『社交界に舞い降りた真紅の姫君』という素晴らしい異名まで頂いてしまったのだが。それに加え、『社交界に舞い(以下略)』を誰が(めと)るか、という争いが怒っているらしい。 モテるって罪よね……。 「……はぁ、黙って聞いてれば何ですか、随分御自身を過大評価なさっているのですね」 わたくしの言葉に横やりを入れたのは誰であろう、わたくしの侍従のヘンゼルだった。 「謙遜は美徳ですよ、姫様。少しは謙遜なさったらいかがでしょうか。そうすれば今より更に美しくなれますよ、多分」 「何よ!さっきから黙って聞いてあげてたのに、わたくしの悪口ばかりじゃない!」     
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