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「えぇ、そりゃ悪くも言いたくなりますよ。毎日毎日こんな姿を見せられれば流石にウザ……いえ、少々精神が削られるものがありますので。小さい頃から変わりませんね、姫様は」
「今『ウザい』って言いかけたわよね!?このわたくしのことを!」
「空耳ではないですか?遂に姫様に幻覚だけでなく幻聴まで……オレは自分が憎くてたまりませんよ。姫様をもっと早くに医者に見せるべきでした。そうすれば姫様はもっとまともな人間になっていたのに……」
「不敬よ!即刻クビにしてやるわ!」
「……それはもとあれ、姫様。本日のご用意はできておりますか?」
無理やり話を逸らされた感は否めないが、しかし彼の話に乗ってあげよう。何せわたくしは優しいから!
「えぇ、バッチリよ!だって今日はハレの舞台だもの!婚約よ婚約!遂にわたくしにも春が来たのよ!」
「……そうですね」
途端に表情を曇らせたヘンゼル。
「……な、何よ」
「いえ……ただ、もうこうやって姫様のことをイジ……いえ、仲良く話せることはないのだろうと思うと感慨深くて……」
「せいせいした、の間違いじゃなくって?」
どうせコイツのことだから本心では「やっと面倒な女から離れられるぜ」程度にしか思っていないのだろう。
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